【2018年反省会(6)】就労継続支援A型・B型とは?障害者手帳とは?

【2018年反省会(6)】就労継続支援A型・B型とは?障害者手帳とは?
 

【2018年反省会】記事一覧(全26回)

前回の記事では、「就労移行支援」という障害者の就労をサポートするサービスに触れた。同様のサービスとして、他には「就労継続支援A型」と「就労継続支援B型」がある。就労継続支援A型の対象者は、雇用契約に基づいた勤務が可能だが、現在は一般企業への就職が困難な65歳未満の人である。事業所と雇用契約を結び、労働者として働きながら就職のための知識・能力を身につける。さらに就労に向けた訓練を受け、一般企業への就職を目指す。

就労継続支援B型は、A型の仕事を行うことが難しい障害者や、年齢・体力などから見て一般の企業で働くことができなくなった人が対象である。A型とは異なり、事業所と雇用契約を結ばないため、非雇用型とも呼ばれる。利用者は作業訓練などを通じて生産活動を行う。その上で、A型や就労移行支援を目指す。就労継続支援事業所は、いわゆる「作業所」であり、利用者は製品組み立てのような軽作業、カフェのスタッフなどといった仕事に就く。A型では利用者が事業所と雇用契約を結んでいるので、基本的には最低賃金以上の給与を得ることができる。一方、B型は非雇用型であり、給与の代わりに工賃が支払われる。平たく言うと、事業所が獲得した利益を、利用者の貢献度合いに基づいて配分するものである。

厚生労働省の資料「障害者の就労支援について」(2015年7月14日)を読むと、就労移行支援、就労継続支援A型・B型における障害種別ごとの利用者数の推移が解る。就労継続支援B型では障害種別による差はほとんどないのに対し、就労移行支援と就労継続支援A型では、精神障害者の伸びが大きくなっている。

就労移行支援、就労継続支援A型・B型の利用者数の推移

先ほど、就労継続支援A型では利用者は最低賃金以上の給与を獲得できると書いた。ところが、実際には、給与の額は事業所によってかなりのばらつきがある。平均賃金月額は2006年から2013年にかけて約40%減少しており、2013年の平均賃金月額69,458円を時給換算すると、全国の最低賃金の平均額である764円を若干下回る。

就労継続支援A型における平均賃金の状況

就労継続支援B型については、2013年の利用者の平均工賃月額は14,437円であり、2006年と比べて18.1%上昇している。とはいえ、上位25%と下位25%の事業所の平均工賃には約5.8倍の差があり、A型と同様に事業所ごとのばらつきが大きい。また、平均工賃月額を時給換算すると178円となり、全国の最低賃金の平均額の4分の1以下にとどまる。

就労継続支援B型における平均工賃の状況
就労継続支援事業所は、A型・B型ともに企業から請け負った軽作業や飲食店の運営などによって一定の売上を上げている。とはいえ、一般企業に比べるとどうしても売上は小さい。また、就労移行支援事業所は職業訓練の場であり、基本的には売上が存在しない。これらの事業所は国から支給される「障害福祉サービス等報酬」によって経営されている。障害福祉サービス等報酬とは、医療機関における診療報酬のようなものである。詳細は「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」にかなり細かく記載されている(1単位=10円)。簡単に言うと、利用者1人あたりの報酬と、事業所側の支援体制の充実度合いに応じた報酬によって成り立っている。

以下のサイトでは、就労移行支援事業所、就労継続支援事業所A型・B型の簡単な収支シミュレーションが掲載されている。

就労移行支援事業所の収支シミュレーション
就労継続支援事業所A型の収支シミュレーション
就労継続支援事業所B型の収支シミュレーション

ただし、私から見ると、このシミュレーションはかなり甘いと思う。いずれも営業利益率が20~40%ほどあり、こんなに利益が出るならば誰もが参入したがるに違いない。上記のシミュレーションには、利用者を集めるのに必要な広告費用や、細かい報酬計算を行う経理の費用、仕事を獲得するための営業費用(就労継続支援A型・B型の場合)などが含まれていない。また、スタッフ給与も相当低く設定されている。一般に、福祉関係の仕事は給与が低いことは、この仕事に就く人ならばある程度は理解している。とはいえ、長く働き続けるとやはり昇給を期待するものである。事業所側が人件費の上昇を嫌うのであれば、スタッフを交代させ、新規のスタッフを採用しなければならない。その場合の採用や訓練に要する費用も考慮されていない。

仮にこれらの費用を入れて試算をすると、営業利益率はおそらく3%程度になるのではないかと予想する。3%程度の営業利益では、売上やコストが少しでも変動するだけですぐに吹き飛んでしまう。就労移行支援、就労継続支援A型・B型ともに、障害福祉サービス費等の報酬は厚生労働省によってあらかじめ決められている。一般的な事業では、顧客が増えて競争が激化したら、付加価値をつけて差別化を狙い、顧客単価を上げようとする。ところが、この手の報酬は、診療報酬や薬価のように、利用者が増えれば増えるほど、年々切り下げられることが多い。事業所が差別化のためにサービス品質を上げると、かえって収益を圧迫してしまう。

ここで、就労移行支援、就労継続支援A型・B型と障害者手帳の関係について述べたいと思う。障害者手帳は、身体障害(身体障害者手帳)、知的障害(療育手帳)、精神障害(精神障害者保健福祉手帳)をカバーする。就労移行支援、就労継続支援A型・B型ともに精神障害者の利用が増加していることと、私自身も精神障害者保健福祉手帳(以下、精神障害者手帳と呼ぶ)を保有していることから、以降では精神障害者に限って話を進める。精神障害者手帳には3級から1級までの3等級があり、厚生労働省が次のように定義している。

1級=精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。
2級=精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。
3級=精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの。

私自身の経験や、他の精神障害者の方々から聞いた話を総合すると、3級は「日常生活はほとんど問題なく送れるものの、労働に制約がかかる人」、2級は「基本的に労働ができず、日常生活ではある程度介護を必要とする人」、1級は「労働がまず不可能であり、日常生活においても常に介護を必要とする人」と言い換えることができる。

私は3級の手帳を保有している。精神障害者手帳の更新は2年に1回であり、私も2018年5月に更新をした。この時点で、2012年8月~9月上旬、2017年8月、2018年2月末~3月末と3回の入院を経験している。厚生労働省「平成30年版 障害者白書」によると、精神障害者の数は392.4万人であり、そのうち入院患者数は31.3万人と、その割合は約8%である。複数回入院したことがある人の割合を正確に算出することは難しいのだが、3回も入院した精神障害者はあまりいないであろう。それでも、私は退院すれば働くことができるので、更新後も3級のままであった(別に2級にしてほしいと思っているわけではない)。3級と2級の間にはかなり大きな違いがあるし、2級と1級の間にはさらに大きな違いがあると感じる。

就労移行支援は概ね3級(障害者手帳を保有していなくても可となっている事業所が多い)、就労継続支援A型は概ね3級から2級、就労継続支援B型は概ね2級を対象としているようである。2級以上は労働にかなりの制約がかかる人であるものの、私が入院中に2級の手帳を保有している人と話した時には、就労継続支援B型で月に1万円でも2万円でも稼ぎたいという人がいたし、A型に通所して前述の平均賃金月額とほぼ等しい賃金を得ている人もいた。1級の手帳を保有している人の中にも、仕事に対する意欲を示す人がいた。

だから、障害者=働くことができない人と一律でとらえてほしくないと私は思う。神奈川県川崎市に、知的障害者を積極的に採用している日本理化学工業株式会社という企業がある。同社は、チョークなどの各種文房具を製造・販売している。当初は障害者の雇用に積極的でなかったのだが、特別支援学校の教師が知的障害のある子どもを連れて、「この子に仕事をさせてほしい」と依頼してきたのが障害者雇用の始まりであった。障害者雇用に関する評判が広まると、知的障害を持つ子どもの母親が、「無給でもいいからこの子を働かせてやってください」とお願いに来たこともあったという。全ての障害者が働けると一般化するのは困難であろう。しかし、障害者でも働きたいと思っている人は決して少なくない。よって、障害者雇用はもちろんのこと、就労移行支援や就労継続支援A型・B型などを通じて場を用意することは重要である。

障害者は常に一定数存在し、かつ近年はその数が増加していることから、就労移行支援や就労継続支援A型・B型には持続可能性が必要である。事業所の開設を考えている人に対しては、利益目的で安易に参入し、利益が出なくなったらさっさと撤退するようなことは避けてほしいと思う(実際、前述の試算の通り、利益を出すことはかなり難しく、慎重に経営しなければならない)。同時に、国に対しても、予算が厳しくなったからといって簡単に報酬を下げてほしくないと望んでいる。障害者が働けないことで病状が悪化し医療費がかさむことと、就労支援関連の予算が増加したとしても障害者がそれぞれ可能な範囲で働くことによって病状の悪化を食い止め、医療費を節約できることを天秤にかけて、適正な報酬体系を設計してもらいたい。

精神障害者手帳を保有していると、行政から様々な金銭的支援を受けることができる。支援の内容は自治体によって異なる。東京都のHPでは、次のような支援が紹介されている。

①所得税計算上の優遇措置
②住民税計算上の優遇措置
③相続税計算上の優遇措置
④贈与税計算上の優遇措置
⑤少額預金の利子所得などの非課税制度、少額公債の利子の非課税制度
⑥自動車税・軽自動車税・自動車取得税の減免(1級のみ)
⑦個人事業税の減免
⑧都営交通乗車証の交付
⑨路線バスの運賃半額割引
⑩生活保護の障害者加算(1級と2級のみ)
⑪都営住宅の優先入居、使用承継制度、特別減額(特別減額は1級と2級のみ)
⑫都立公園・都立施設の入場料免除
⑬都立公園付設有料駐車場の利用料金免除
⑭全国の指定宿泊施設の利用料金に対する助成
⑮NTT電話番号案内の無料利用(ふれあい案内)
⑯携帯電話料金の割引
生活福祉資金貸付制度
⑱駐車禁止規制からの除外措置(1級のみ)
⑲NHKの受信料免除

しかし、私個人に限って言うと、これらの支援はほとんど受けていない。

①課税対象所得を計算する際に、27万円の「障害者控除」が加わる。所得税の税率は国税庁のHPに記載があり、仮に課税対象所得が330万円を超え695万円以下であれば、所得税が27万円×20%=5.4万円下がる。私が受けられるのは、この①ぐらいである。
②住民税の計算方法と障害者に対する優遇措置は自治体によって異なる。私が住んでいた豊島区の場合、前年中の所得が125万円以下であれば住民税が非課税になる。
③私には相続財産がない。
④私は贈与を受けていない。
⑤預金の利子は微々たるものであるし、公債は保有していない。
⑥私は自動車を保有していない。
⑦東京都の場合、合計所得金額(事業・不動産所得と給与・雑所得など各種所得金額を合計した金額〔青色申告特別控除前〕)が370万円以下であれば減免される。ただし、減免措置を受けるには申請が必要であり、私は今回の記事を書くまでこの減免措置を知らなかった。
⑧たまたまかもしれないが、私は都営地下鉄や都電さくらトラム、日暮里・舎人ライナーを利用する機会がほとんどない。一時期、大田区に顧客企業が何社かあり、都営浅草線をよく利用していたことがあった。しかし、月数千円のために申請するのが面倒だったのでやっていない。
⑨路線バスはまず利用する機会がない。
⑩生活保護を受給していない。
⑪都営住宅に住んでいない。
⑫ごくまれに東京都現代美術館や東京都美術館を利用する程度であり、普段は手帳を持ち歩いてないため、一般料金を支払っている。
⑬自動車を保有していないので、駐車場を利用しない。
⑭もう8年ぐらい旅行をしていないため、宿泊施設を利用することもない。
⑮NTT電話番号案内を利用したことがない。
⑯私はドコモと契約しており、ハーティ割引を受けている。だが、ハーティ割引を受けると他のいくつかの割引が受けられなくなる。私は、通話については24時間かけ放題プランを、データ通信については5Gプランを使っている。月額利用料はだいたい1万円(端末代を含む)で、ネットで調べた限りでは、他のユーザーとあまり変わらない。
⑰生活福祉資金貸付制度は利用していない。
⑱自動車を保有していないので、駐車禁止規制に引っかからない。
NHKのHPによれば、手帳を保有している人がいる世帯で、かつ世帯構成員全員が住民税非課税の場合に限り、全額免除となる。

私の場合は、自立支援医療(精神通院医療)高額療養費制度に大変お世話になっている。自立支援医療(精神通院医療)とは、精神科の病院や診療所に入院しないで行われる治療(外来、投薬、デイケア、訪問看護など)の自己負担額を軽減する制度である。通常、患者の自己負担は3割であるが、自立支援医療の適用を受けると、自己負担は基本的に1割となる。また、高額療養費制度とは、医療機関や薬局でかかった医療費の自己負担額が、ひと月(月の初めから終わりまで)で一定額を超えた場合に、その超えた金額が支給される制度(別の言い方をすれば、自己負担額が一定額に収まる制度)である。

精神疾患の治療は長期にわたることが多い。治るまでに時間がかかるし、治った、あるいは寛解した(=全治ではないが病状が治まって穏やかになった)後も、再発・悪化を防ぐために継続的な通院が必要となる。私も長らく月に1回のペースで通院している。私の場合、1回の通院による診療代と薬代の合計は5,000円前後になる。1割負担でこの金額であるから、年間で使われる保険料は約5,000円÷10%×12か月=約60万円となる。また、精神科に入院すると、1か月でだいたい50~60万円かかる。そのうち、私の負担分は高額療養費制度で定められた上限額のみであり、残りは保険料で賄われる。だから、私は他の被保険者の皆様に頭が上がらないし、日本が国民皆保険制度を採用している国で本当によかったと感謝している。

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