【2018年反省会(8)】帰京後はより焦って障害者雇用を探していた

【2018年反省会(8)】帰京後はより焦って障害者雇用を探していた

【2018年反省会】記事一覧(全26回)

7月末に実家から帰京したのはいいものの、待っていたのは仕事がないという現実であった。3月にも1か月間入院し、その後安定した案件を開拓することができなかったため、今回の静養を経て、これ以上個人事業主として仕事を続けるのは難しいかもしれないと考えるようになった。以前の記事で触れたように、私は精神障害者手帳(3級)を保有している。そこで、障害者雇用枠で一般企業に転職しようと思い立った。ただし、この先ずっと障害者雇用を続けるのではなく、45歳ぐらいまで障害者枠で働いて資金を貯め、その後再び開業する計画であった。

障害者雇用促進法により、従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務がある。障害者雇用義務の対象は身体障害者と知的障害者であったが、2018年4月からは精神障害者が加わった。同時に、法定雇用率は、常用労働者数が45.5人以上(短時間労働者は原則として0.5人とカウント)の民間企業の場合2.2%、常用労働者数が40.0人以上の特殊法人・独立行政法人の場合2.5%、職員数が40.0以上の国・地方公共団体の機関の場合2.5%、職員数が42.0人以上の教育委員会の場合2.4%となった。いずれのケースでも、法定雇用率は2021年3月末までに0.1%引き上げられる。

原則として、法定雇用率を満たさない企業からは「障害者雇用納付金」を徴収する。この納付金を基に、雇用義務数より多くの障害者を雇用する企業に対して「障害者雇用調整金」を支払ったり、障害者を雇用するために必要な施設設備費(例えば、身体障害者のためにオフィスにスロープを設置する、トイレを改修するなどの費用)を助成したりしている。

常時雇用している従業員数が100人を超えているが法定雇用率に満たない企業は、法定雇用障害者数より少ない障害者数に応じて、1人につき月額50,000円の納付金を納付しなければならない。ただし、常時雇用している従業員数が100人を超え200人以下の企業には、2015年4月1日から2020年3月31日までの間、納付金の減額特例が適用される(不足する障害者1人につき、月額50,000円から40,000円に減額)。これに対して、常時雇用している労働者数が100人を超える企業で障害者雇用率を超えて障害者を雇用している企業には、その超えて雇用している障害者数に応じて、1人につき月額27,000円の調整金が支給される。

平成30年版 障害者白書」によると、身体障害者は436万人、知的障害者は108.2万人、精神障害者は392.4万人である。複数の障害を合わせ持つ人もいるため、これらの数値の単純合計が障害者の総数にはならないものの、国民のおよそ7.4%が何らかの障害を有している計算になる。2017年6月1日時点で、民間企業に雇用されている障害者は49万5,795.0人であり、実雇用率は1.97%であった(当時の法定雇用率は2.0%)。昨年、中央省庁における障害者雇用数の水増し問題が発覚したが、2018年6月1日時点で公的機関などに雇用されている障害者数は、国の機関で3,902.5人(実雇用率1.22%)、都道府県の機関で8,244.5人(同2.44%)、市町村の機関で2万5,241.5人(同2.38%)、教育委員会で1万2,670.0人(同1.90%)、独立行政法人・特殊法人で1万1,010.0人(同2.54%)であったらしい。

中央省庁では、採用時に障害者手帳を確認することが厚生労働省の通知で明記されていなかったため、応募者の自己申告により障害者採用としていた例があった。また、職員の中には、弱視である、健康診断において異常が確認されたという事実をもって障害者と認定された人もいた。さらに、障害者雇用の現況報告の際に、本人に確認を取らず勝手に障害者として計上していたこともあった。要するにガバガバな運用であったわけだ。

個人的には、民間企業の報告もかなりガバガバなのではないかと思う。「障害者雇用状況報告」のフォーマットを見ると、事業主が単に障害者数を記入するだけで済む。障害者の氏名の記載欄もなく、障害者手帳のコピーの提出も求められていない。実は、2018年6月1日時点での障害者雇用数は、公的機関などの数値のみが開示されており、民間企業については「データ入力のための作業ツールの不具合により、平成31年3月末までに公表する予定」らしい。前述の報告書の雛形を見る限り、障害者雇用数は単純集計で出るはずだ。厚生労働省がわざわざこんな言い訳をしたのは、水増し問題があったのでいい加減な数字を発表できず、今になって職員が民間企業をサンプリング抽出して障害者雇用の実態をつぶさに調査し、それに基づいて統計的観点からより正確な数値を算出しようとしているためではないかと推測する。

仮に、2017年6月1日時点で民間企業に雇用されている障害者数と、2018年6月1日時点で公的機関などに雇用されている障害者数の数値が正しければ、障害者雇用の合計数は約56万人となる。厚生労働省「障害者雇用の現状等」(2017年9月20日)によると、障害者のうち18歳以上65歳未満の在宅者は約355万人である。全ての在宅障害者が就労可能なわけではないが、在宅障害者に占める障害者雇用の割合はおよそ6人に1人である。この比率をもっと上げるために、法定雇用率が設定されているのだろう。

近年は障害者雇用に特化した就職・転職エージェントが増えている。一般の転職エージェントを利用する場合、利用者登録の後にエージェントと面談を行い、希望条件に合致する企業を探してもらう。障害者雇用に特化したエージェントを使う時も、基本的な流れは同じである。ただし、障害者の場合は、障害の種類や度合いに応じて、職場で配慮してほしいこと(精神障害者であれば定期的な通院を許可してほしい、など)を、エージェントを通じて企業に伝える。

私は3社のエージェントに登録してみた。そのうち、1社からは登録後の連絡がなかった。もう1社からは、登録後すぐ「希望条件に合う求人を探して1週間以内に連絡する」というメールが届いたのに、1週間後に「条件に合致する求人はなかった」という簡単な報告だけで終わってしまった。エージェントと面談ができたのは1社のみである。

1時間ほどの面談で、今までの仕事や病歴のことを話した。すると、エージェントは、私が直近の7月に約1か月間実家で静養していた点が引っかかったようである。エージェントによれば、精神障害者は転職後の定着率が悪く、企業側はまずは毎日必ず定時に出社し、定時に退社できる人を求めているらしい。エージェントはその約束を確実に守れる人を紹介したいようで、静養明けの私はすぐには紹介できないとのことだった。私が個人事業主として7年ほど仕事をしており、特に2015年から2017年の間は、フルタイムどころか週に6.5日のペースで働いていたことは、何の証拠にもならなかった。就労移行支援事業所に週5日通えるようになるか、アルバイトでいいので週5日働けるようになってからもう一度相談してほしいと伝えられた。

就労移行支援事業所は、以前の記事で書いたように、生活習慣を整えながらパソコンの基本スキルやコミュニケーション能力の訓練を受けるところである。一応、曲がりなりにも経営コンサルティングの仕事をずっとやって来た自分が、生活のリズムを作るのが主たる目的であるとはいえ、日中にパソコン操作などを覚えるトレーニングを一定期間受けることははばかられた。それに、通所している間は収入がゼロになってしまうのも問題であった。

私が面談を受けた企業は、障害者の就職・転職支援では業界トップであった。一連の話を父親に報告したところ、「業界トップに相談してもダメだ。ワタミを見てみろ。ブラック企業でおかしくなったではないか。業界トップは間違いなく経営が傾く。だからハローワークに行け」と言われた。父親の理屈が正しければ、日本中から全企業が消える。まず、各業界のトップ企業がダメになる。すると、業界2位の企業がトップになる。だが、トップになった途端にダメになる。その次には業界3位だった企業がトップになる。しかし、その企業もまたダメになる。これを繰り返していけば、業界の企業が全てダメになる。そもそも、求人情報の質はともかく、また、障害者求人に関してははっきり解らないものの、求人総数で言えばハローワークは日本一である。

その時、父親からは「お前の脳みそは馬鹿だからそういうことになる」とも言われた。百歩譲って「お前は馬鹿だから」という言葉であれば耐えられる。「脳みそは馬鹿」と批判されるのは苦痛であった。精神障害の多くは、脳に原因があるとされる。私が罹患している双極性障害は気分障害の一種である。感情に問題があるのだから、感情をつかさどる脳の部位に何らかの障害が生じている可能性がある。それを直接突かれるのはかなり辛い。万が一、足に障害がある人に向かって、「お前の足は馬鹿だ」などと言ったら、相手は激高するだろう。

もっとも、父親は私の病気についてほとんど無知であるから、口が滑っただけかもしれない。私は後で母親に、そういう言い方は止めるように父親に伝えてほしいとお願いした。すると、「父の物言いはいつものことではないか」と返ってきた。後の記事で触れるが、私は高校まで実家で暮らしていた時の家族とのエピソード記憶がほとんどない。もし母親の言葉通りならば、私は父親からいつも「お前の脳みそは馬鹿だ」と言われて育ったことになる。

エージェントが1社だけでは心もとないので、念のためハローワークにも行ってみた。担当者に相談したところ、アルバイトから始めた方がよいと、同じリアクションが返ってきた。私は人事分野のコンサルティング経験が長いため、人事もしくはその延長線上として総務の障害者雇用を希望していた。また、将来的に再開業するための資金を貯蓄するのに必要な月収も計算してあった。それらのことを担当者に伝えると、ハローワークのシステムで正社員の求人を検索してくれた。ところが、私の希望条件に合致する求人はほとんどなかった。

厚生労働省「平成29年度 障害者の職業紹介状況等」(2018年5月25日)によると、障害種別・産業別に見た就職件数は、どの障害も「医療・福祉」が3~4割と最も多い。職業別の割合を見ると、身体障害者は「事務的職業」、「運輸・清掃・包装等の職業」、「サービスの職業」、知的障害者は「運輸・清掃・包装等の職業」、「生産工程の職業」、「サービスの職業」、精神障害者は「運輸・清掃・包装等の職業」、「事務的職業」、「生産工程の職業」の順らしい。ただし、この就職件数には、正社員と非正規社員の両方が含まれる。また、私が希望していた人事・総務の仕事は「事務的職業」にあたるが、事務的職業の大半は一般事務である。「精神障害者」で「人事・総務」の「正社員」として雇用された人は限りなく少ないのではないかと思う。

求人票には「スロープ、車いす用のトイレあり」、「電話対応は応相談」などといった配慮事項が書かれていた。これらの記述は身体障害者や知的障害者を念頭に置いている。精神障害者の場合はどうなのかと担当者に尋ねてみたら、精神障害者の症状は人によって様々であり、配慮事項もバラバラであるため、面接の中で企業側と擦り合わせていくとのことだった。自立支援医療の箇所でも述べたように、精神障害者は定期的に通院していることが多い。よって、「日中の定期通院は応相談」ぐらいは書かれていても不思議ではなかった。

ハローワークの障害者雇用枠で就職・転職する人は、軽度の身体障害者が大部分だという話を後から聞いたことがある。実際、やや古い資料であり、東京都の中小企業に限定した話になるが、東京都福祉保健局「障害者就労実態調査報告書【概要版】」(2014年11月)には、「都内の中小企業における障害者雇用は身体障害者が中心であり、ハローワーク以外の就労支援機関の認知度・活用度は低い」とある。都外の中小企業であれば精神障害者を積極的に雇用する理由があるのかは、私には解らない。邪推すると、ハローワークに障害者雇用枠で求人を出している企業の大半は、あまり精神障害者の雇用に前向きではないのかもしれない。

前掲の厚生労働省「障害者雇用の現状等」には、ハローワークにおける障害種別の職業紹介状況を年度ごとに集計したページがある。これを見ると、精神障害者の就職件数の伸び率が非常に高い。ところが、2013年度(平成25年度)時点で、精神障害者の就職件数が身体障害者の就職件数を上回っている点が、先ほどの東京都福祉保健局の報告書にある記述と矛盾する。さらに、私の実感と例の水増し問題の件とを合わせて考えれば、厚生労働省の数値を本当にそのまま信じてよいのだろうかという気持ちになる。

ハローワークにおける障害者の職業紹介状況①

ハローワークにおける障害者の職業紹介状況②

とはいえ、それを言い出すと、障害者雇用に関しては様々なことが信じられなくなる。障害者の就職・転職支援企業は、「精神障害者の年収600万円」といったWeb広告を出していることがある。年収600万円は極端だとしても、その企業のHPで公開求人を調べると、年収300~400万円ぐらいは簡単に見つかる。一方、厚生労働省「平成25年度障害者雇用実態調査結果」によれば、週30時間以上働く障害者の平均月給(超過勤務手当を除く)は、身体障害者が25.1万円、知的障害者が13.0万円、精神障害者が19.6万円である。この調査は5年に1回であるため、平成30年度の結果(現時点で未公表)は異なるかもしれないが、大幅に変化するとも考えにくい。厚生労働省の数字を信じるならば、民間企業がうたう年収は上振れしすぎだ。

私が面談したエージェントは、精神障害者は定着率が悪いと言っていた。しかし、「障害者雇用の現状等」には、障害者の定着状況を障害種別・求人種類別に分析したグラフがある。確かに、障害者求人について1年後の定着率を見ると、発達障害と精神障害では約15%の差がある。だが、発達障害者を10人雇用すれば1年後には2人ほど離職することと、精神障害者を10人雇用すれば1年後には3~4人離職することを比べても、企業は「精神障害者の方がやや離職率が高い」と感じる程度ではないかと思う。精神障害者の1年後の離職率が60%ぐらいになってようやく、企業側は「明らかに精神障害者は定着率が悪い」と体感するに違いない。

また、一般求人(開示)(=求職者が自分は障害者であると開示して一般求人に応募すること)と一般求人(非開示)(=求職者が自分は障害者であると開示しないこと)の場合は、知的障害者の方が定着率が低い点をこのエージェントは説明できるのかも疑問である。

障害者の定着状況について(求人種類別・障害種別)

今こうして改めて色々と調べてみると、障害者雇用については、公的機関が言っていることも、民間企業が言っていることも不自然な点があり、一体何の情報を信用すればよいのか解らなくなる。しかしながら、当時は何とか障害者雇用で安定した収入を確保したい一心であった。その下準備として、エージェントとハローワークの双方からアドバイスされたように、アルバイトに挑戦することにした。アルバイトに応募するのは、実に15年ぶりのことであった。

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